天文ショップグラビティでは、数年前からニュートン反射を自作してきました。最近は鏡筒づくりと各種アクセサリーの製作にも取り組んでいます。ただ、光条についてはこれまで系統立てて計算したことがなかったので、この機会にまとめました。アクセサリーは販売中で、ニュートン反射も今後発売する予定です。

スパイダー光条シミュレーターシングル/ダブル、羽根の幅、主鏡の押さえ、光の色を変えて、星像の変化をその場で計算できます。

ニュートン反射や RC(リッチー・クレチアン)など、副鏡をスパイダーで支える反射望遠鏡で明るい星を撮ると、十字の光条が写ります。原因はスパイダーによる回折で、向き・長さ・色はスパイダーの形と光の波長で決まります。シュミットカセグレンやマクストフのように補正板で副鏡を支える方式では、スパイダーによる光条は出ません。

結論:羽根が平行なら、ダブルでも光条は4本で、細くもなりません。変わるのは光条方向の明るさで、明るい星では光条が強く長く見え、ナローバンドでは計算上、破線状になります。

一般的な十字スパイダーは4本のアームで副鏡を支えます。アームの板を「羽根」と呼び、羽根1枚のものを「シングル」、平行な2枚のものを「ダブル」と呼びます(図 7)。どちらも光条は4方向ですが、明るさや縞の出方が違います。

数式は各節末の「数式と図解」に、導出は技術付録にまとめました。本稿の図と数値は理想的な光学モデルによる計算で、実写ではありません。

本稿の前提
  • 例はニュートン反射の数値ですが、副鏡をスパイダーで支える反射望遠鏡なら同じ原理が当てはまります(ニュートン反射では副鏡を斜鏡と呼びます)
  • 主鏡口径 200 mm、副鏡径 50 mm。シングルは羽根幅 1 mm、ダブルは各 0.5 mm・中心間隔 10 mm(遮蔽面積はほぼ同じ)
  • 波長は特記がなければ 550 nm(緑)。白色光は 400–700 nm
  • 角度は秒角(″)で表します。1″ は 1/3600° で、満月の直径は約 1800″
  • カメラの例:焦点距離 800 mm、画素 3.76 μm(約 0.97″/画素)
  • 開口(入射瞳):鏡筒を正面から見たときに光が通る部分の形
入射瞳(光軸方向から見たところ)白色光 400–700 nm · ±100″20″焦点面の星像(入射瞳全体から計算)
図 1|シングル十字スパイダーの開口(入射瞳)と、白色光で計算した星像。

星像と光条のしくみ

光は開口を通るとわずかに広がります。これが回折で、開口が狭いほど大きく広がります。

主鏡も円形の開口なので、完全な光学系でも恒星は点にならず、淡いリングに囲まれた小さな円盤(エアリーディスク)になります。この明るさの分布を点像分布関数(PSF)と呼び、星像の中心、回折リング、光条はすべてその一部です。

羽根は光を遮るのに、なぜ明るい線が増えるのか。焦点面の明るさは、鏡面各所からの光の重なり方(干渉)で決まります。一部が遮られると打ち消しが崩れ、その場所が明るくなります。光の総量は減っていて、配分が変わるだけです。

数式と図解:光を遮るとなぜ明るい線が増えるのか

読み方:遮蔽を「光の場(複素振幅)の引き算」として書きます。引くのは符号をもつ振幅なので、引いたあとで明るくなる場所が生じます(図 2)。

1

入射瞳上の各点は、それぞれ小さな波源とみなせます。位置 x から角度 θx の方向へ進む光は、中心から出た光より約 xθx だけ長い距離を進むため(小角度近似)、その分の位相のずれが生じます。

\Delta\varphi(x)=\frac{2\pi}{\lambda}\,x\,\theta_x
2

入射瞳全体の寄与を、それぞれの位相も含めて足し合わせる(積分する)と、その方向の光の場が得られます。この「位置に応じた位相をつけて足し合わせる」計算が、2次元フーリエ変換そのものです1。

E(\theta_x,\theta_y)\;\propto\;\iint P(x,y)\,e^{-i\frac{2\pi}{\lambda}(x\theta_x+y\theta_y)}\,dx\,dy\;=\;\widetilde P\!\left(\frac{\theta_x}{\lambda},\frac{\theta_y}{\lambda}\right)

主鏡は、遠方から来る各方向の光を焦点面上の一点(焦点距離 × 角度の位置)に集めます。そのため、焦点面の像はこの角度分布そのものになります。厳密な導出は技術付録 B を参照してください。

3

スパイダーによる遮蔽は、入射瞳の上では引き算です。フーリエ変換は線形なので、焦点面の光の場も同じように引き算になります。

P=P_0-S\quad\Longrightarrow\quad E=E_0-E_S
スパイダーなしの入射瞳P₀羽根が遮る部分S実際の入射瞳P = P₀ − S−=ℱ のあと |·|²550 nm10″I = |ℱ{P}|²
図 2|左の3枚は模式図(羽根幅は誇張)。右は羽根幅 1 mm、550 nm で計算した星像(±40″)。
4

カメラが記録するのは明るさ、つまり光の場の絶対値の2乗です。展開すると交差項が現れます。

I=|E_0-E_S|^2=|E_0|^2+|E_S|^2-2\,\mathrm{Re}\!\left(E_0E_S^{*}\right)

交差項は正にも負にもなります。星像の中心では E0 と ES が同符号なので交差項は負になり、中心はわずかに暗くなります。光条方向に星像の中心から十分離れ、E0 が弱くなった領域では |ES|2 が支配的になり、光条の大部分はこの項です。

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それでも光の総量は増えません。パーセバルの定理により、明るさの積分は通過面積だけで決まります4。光条が明るくなるのは、光が別の場所へ配分し直されるためです。

\iint |\widetilde P(u,v)|^2\,du\,dv=\iint |P(x,y)|^2\,dx\,dy=A_{\rm clear}

光条の向き

細長い羽根は、同じ幅のスリットとほぼ同じように回折します(バビネの原理:遮蔽と同じ形の開口は、ほぼ同じ回折パターンをつくる)。幅方向は狭いので光は大きく広がり、長さ方向はほとんど広がりません。そのため、羽根と直交する細長い線が現れます。

十字スパイダーの向かい合う2本は一直線なので、向きは縦横の2つだけです。それぞれが両側に伸びる線をつくり、合わせて4本の光条になります。3本アームでは6本です(補足)。

以下、光条が伸びる方向を光条方向、それと直交する方向を直交方向と呼びます。羽根の向きは「縦向き」「横向き」のように画面上の向きで表します。

数式と図解:長方形の羽根 → sinc 曲線 → 光条

読み方:縦向きの羽根1枚は、左右方向に幅 w の「長方形」です。そのフーリエ変換が sinc、2乗が光条の明るさです(図 3)。w が分母側に入るので、羽根が細いほど曲線は広がります。

1

正面から見た縦向きの羽根1枚は、幅 w、長さ L の長方形です(副鏡や円形の縁による切り取りはひとまず無視します)。矩形関数を使って、その遮蔽を書きます。

S(x,y)=\mathrm{rect}\!\left(\frac{x}{w}\right)\mathrm{rect}\!\left(\frac{y}{L}\right),\qquad \mathrm{rect}(t)=\begin{cases}1, & |t|<\frac{1}{2}\\[2pt] 0, & |t|>\frac{1}{2}\end{cases}

ここでいう「長方形」は、光そのものが矩形波になるという意味ではありません。理想的な直線状の羽根を幅方向に見たときの遮蔽の投影で、羽根の内側は遮られるので 1、外側はこの羽根による遮蔽がないので 0 とします。有限区間だけの矩形関数(トップハット関数)で、周期的に繰り返すものではありません。実際の羽根の縁、傾き、円形の縁による切り取りがあると、形はこの近似からずれます。

2

長方形は x 方向と y 方向が互いに独立なので、2次元の積分は2つの1次元積分の積に分けられます(u = θx/λ、v = θy/λ とおきます)。

\widetilde S(u,v)=\int_{-w/2}^{w/2}e^{-i2\pi ux}\,dx\;\cdot\int_{-L/2}^{L/2}e^{-i2\pi vy}\,dy
3

1つずつ積分します。e−i2πux の積分は同じ指数関数を −i2πu で割ったものなので、上下限を代入し、オイラーの公式で正弦にまとめます2。

\int_{-w/2}^{w/2}e^{-i2\pi ux}\,dx=\frac{e^{-i\pi uw}-e^{i\pi uw}}{-i2\pi u}=\frac{\sin(\pi wu)}{\pi u}=w\,\mathrm{sinc}(\pi wu)
\mathrm{sinc}(z)=\frac{\sin z}{z},\qquad \mathrm{sinc}(0)=1
4

2方向をまとめて、角度に戻します。

E_S(\theta_x,\theta_y)\;\propto\;wL\;\mathrm{sinc}\!\left(\frac{\pi w\,\theta_x}{\lambda}\right)\mathrm{sinc}\!\left(\frac{\pi L\,\theta_y}{\lambda}\right)

寸法は sinc の括弧の中で角度に掛かっています。寸法が小さいほど、同じ形の関数が横に引き伸ばされます。羽根の w は小さいので θx(水平)方向に広く、L は大きいので θy(垂直)方向に狭くなります。こうして、縦向きの羽根と直交する、水平で細長い明るい線ができます。

① 縦向きの羽根1枚幅 w長さ L断面② 遮蔽関数 rect(x / w)01-1-0.500.51x / wℱ③ 振幅と強度00.51-4-3-2-101234u = wθₓ / λ振幅 sinc(πu)強度 sinc²
図 3|羽根の幅方向の断面(矩形関数)と、その振幅 sinc・強度 sinc²。横軸は u = wθₓ/λ で、z = πu が π の整数倍のとき 0 になります。
5

sinc は負の値もとりますが、明るさは2乗で決まるので、山と谷が交互に並ぶ形になります。

I_S(\theta_x,\theta_y)\;\propto\;(wL)^2\,\mathrm{sinc}^2\!\left(\frac{\pi w\,\theta_x}{\lambda}\right)\mathrm{sinc}^2\!\left(\frac{\pi L\,\theta_y}{\lambda}\right)

これは羽根1枚だけの遮蔽項で、形と尺度を見るためのものです。星像全体を求めるには、前節の方法で円形開口、副鏡、ほかの羽根の光の場と干渉させて合成する必要があります。

羽根の幅と光条の明るさ

羽根の幅 w は、星像近くの光条の明るさ(約 w² に比例)と、明るい区間の広がり(約 λ/w)を決めます。薄い羽根は星像近くでは暗いものの、明るい区間がより外まで続き、0.5 mm の羽根は 113–227″ で 1 mm より明るくなります。λ/w より外では、明るさは幅にほとんど左右されず、羽根の長辺の数で決まります(図 4)。

10⁻⁴10⁻³10⁻²10⁻¹10⁰10¹0100200300400500600光条に沿った角度 θ∥(秒角)羽根の項の強度(1 mm の中心 = 1)227″113″57″w = 0.5 mmw = 1 mmw = 2 mm
図 4|羽根幅 0.5、1、2 mm での羽根1枚の回折項(1 mm の中心 = 1)。包絡線の第1暗点は約 227″、113″、57″。

550 nm では、幅 1 mm の羽根の包絡線の第1暗点は約 113″、0.5 mm では約 227″ です。ここは光条の終点ではなく最初の谷で、星像全体では完全には暗くならず、白色光では色ごとに位置がずれてなだらかになります。

光条には光学的な終点がありません。第1暗点の外にも弱い山が続き、どこまで写るかは星の明るさ、露出、強調処理で決まります。

羽根が太いと、明るい星が四角く見えることがあります。羽根が太いほど、星像近くの光条は明るく短い「角」のようになります。550 nm の包絡線の第1暗点は 1 mm で約 113″、3 mm で約 38″ で、星像近くの明るさは幅の2乗に比例して約9倍です。0.97″/画素では 38″ は約 40 画素で、飽和した星像の大きさと同程度です。この4つの角が、星像を四角く見せることがあります。太い1枚羽根から細いダブルに替えて解消したという利用者の報告もあります*。

星像の形は、鏡の締め付け、光軸、ピントなどでも変わります。スパイダーによる「角」は向きが羽根に対応し、明るい星だけに出ます。

数式と図解:暗点の位置と光条の太さ

読み方:包絡線の第1暗点 ≈ 波長 ÷ 羽根の幅(550 nm ÷ 1 mm ≈ 113″)。ボックス内では、薄い羽根が星像近くで暗い理由と、光条の太さの式も示します。

1

第1暗点は、光条方向の sinc が最初に 0 になる点です。sin は π で初めて 0 になります。

\sin\!\left(\frac{\pi w\,\theta_\parallel}{\lambda}\right)=0\quad\Longrightarrow\quad \theta_1=\frac{\lambda}{w}
2

数値を代入し、1 rad ≈ 206265″ で秒角に換算します。

\theta_1=\frac{550\times10^{-9}\ \mathrm{m}}{1\times10^{-3}\ \mathrm{m}}=5.5\times10^{-4}\ \mathrm{rad}\approx113''

羽根の幅を 0.5 mm にすると θ1 は2倍の約 227″ になります。これは羽根1枚の項の零点で、星像全体ではこの位置が真っ暗になるとは限りません。

3

薄い羽根の光条が暗い理由:角度 0 での値を見ると、sinc(0) = 1 なので面積の因子だけが残ります。

E_S(0,0)\propto wL,\qquad I_S(0,0)\propto (wL)^2

羽根を薄くすると、遮蔽する面積も小さくなります。長さと入射光を固定すると、羽根1枚の形状項の中心の振幅は wL に、中心の強度は (wL)^2 に比例します。したがって薄い羽根は包絡線が広い一方で、中心の強度は低くなります。この関係は中心の値だけを表すもので、すべての角度が同じ割合で暗くなるとはいえず、面積の2乗を回折エネルギーの積分とみなすこともできません。

4

光条の太さ:直交方向で変化するのは、L を含む sinc です。その2乗が半分になるのは z ≈ 1.392 のときで、両側を合わせると半値全幅になります。

\mathrm{sinc}^2(z)=\frac{1}{2}\ \Rightarrow\ z\approx1.392,\qquad \mathrm{FWHM}_\perp=\frac{2\times1.392}{\pi}\,\frac{\lambda}{L}\approx0.886\,\frac{\lambda}{L}

つまり羽根1枚だけで見ると、羽根が長いほど光条は細くなります。

5

十字スパイダー全体では、向かい合う2本のアームはそれぞれ長さ L = (1 − ε)D/2 で、副鏡で隔てられ、中心どうしの距離は b = (1 + ε)D/2 です。羽根の長さ方向には2つの平行移動したコピーがあり、シフト定理により余弦の因子が加わります。

E(\theta_\perp)\;\propto\;L\,\mathrm{sinc}\!\left(\frac{\pi L\,\theta_\perp}{\lambda}\right)\cdot2\cos\!\left(\frac{\pi b\,\theta_\perp}{\lambda}\right),\qquad \theta_{\rm env}=\frac{\lambda}{L},\quad \Delta\theta_{\rm fringe}=\frac{\lambda}{b}

200 mm、ε = 0.25、550 nm では L = 75 mm で、包絡線の最初の零点は約 1.5″(半値全幅 約 1.3″)、b = 125 mm で明線の間隔は約 0.9″ になり、入射瞳全体の計算と一致します。どちらの尺度にも羽根の幅 w は含まれません。

光条の見かけの長さには、光学的な終点はありません。sinc パターンは第1零点の外側にも副極大が続き、それを記録・表示できるかどうかは、星の明るさ、露出、ノイズ、表示のしきい値で決まります。露出を増やしたり暗部を強く持ち上げたりすれば光条は長く見えますが、入射瞳で決まる回折の尺度そのものは変わりません。

実際の反射望遠鏡では、副鏡が向かい合う2本のアームを隔てるため2本の間で干渉が起こり、円形の主鏡の縁も羽根の投影を切り取ります。したがって \lambda/w と \lambda/L は孤立した矩形項の尺度の目安で、入射瞳全体の計算の代わりにはなりません。光条の太さは、星像の中心からどの位置で測ったかも指定する必要があります。

光条の太さ

光条の太さは、光条上の一点で直交方向に測った幅です。規則は同じで、羽根の寸法が小さい方向ほど光は広がります。羽根は長さ方向に口径いっぱいまで長いので光条は細く、その太さは主鏡口径 D と波長で決まります。羽根の幅を変えても、太さはほとんど変わりません。

直交方向に見ると、光条は包絡線(半値全幅 約 1.3″)の中に、約 0.9″ 間隔の細い明線が並ぶ構造です(口径 200 mm、550 nm)。中央の明線の半値全幅(ピークの半分の明るさでの幅)は約 0.4″ で、130 mm では約 0.65″、300 mm では約 0.27″ と、ほぼ 1/D に比例します(図 5)。

① 羽根の幅を変える(D = 200 mm)00.51-2-1012光条と直交する方向の角度(秒角)強度(中心 = 1)w = 0.5 mmw = 1 mmw = 2 mm② 主鏡口径を変える(w = 1 mm)00.51-2-1012光条と直交する方向の角度(秒角)D = 130 mmD = 200 mmD = 300 mmオレンジの線 = 太さを測る方向
図 5|直交方向に測った光条の明るさ(白色光、星像の中心から 30–50″ の平均)。① 羽根の幅を変えてもほぼ同じ。② 口径が大きいほど細い。

実際の写真では、明線はシーイングで重なって1本の帯になります。シーイング 2.5″ では帯の半値全幅は口径 130–300 mm で 2.8–3.3″、1.5″ では 200 mm で約 2.0–2.1″(130 mm で約 2.4″、300 mm で約 1.8″)です。羽根の幅やシングル/ダブルによる差はほとんどありません。写真の光条の太さは主にシーイングと画素で決まり、明るい光条ほど強調処理で太く見えます。

光条の色

広がり方は波長によっても変わり、赤は大きく、青は小さく広がります。そのため色ごとに明暗の位置がずれ(図 6)、青が暗く赤が明るい位置では暖色寄りに、逆では寒色寄りになります。

00.250.50.751050100150200250300光条に沿った角度 θ∥(秒角)それぞれ規格化した強度450 nm:93″550 nm:113″650 nm:134″450 nm550 nm650 nm
図 6|羽根幅 1 mm、450・550・650 nm での羽根1枚の回折項(各ピークで規格化)。第1暗点は約 93″、113″、134″。

この色づきは回折そのものによるもので、色収差がない反射望遠鏡でも生じます。実際の色は星の色、フィルター、カメラ、画像処理にも左右されます。

数式と図解:波長による暗点の移動と、2種類の足し合わせ

読み方:暗点の位置は波長に比例し、1 mm の羽根では 450、550、650 nm で約 93″、113″、134″ です。同じ色の光は振幅を、異なる色は明るさを足し合わせます。

1

第1暗点 θ1 = λ/w は波長に比例します。羽根幅 1 mm の場合:

\theta_1=\frac{\lambda}{w}:\qquad 450\ \mathrm{nm}\to93'',\qquad 550\ \mathrm{nm}\to113'',\qquad 650\ \mathrm{nm}\to134''

第1暗点は青、緑、赤の順に外側へ移ります。93–134″ では青から順に暗くなり、その外側では赤が谷に入るため、色は赤紫から青へと変わります。

2

色を合成するときの足し合わせ方は2種類あり、混同できません。同じ波長の中では、入射瞳の各所から来る光は干渉するので、光の場を足してから2乗します。

I_\lambda(\boldsymbol\theta)=\Big|\sum_k E_k(\boldsymbol\theta;\lambda)\Big|^2
3

異なる波長どうしは、カメラが露出時間のあいだにそれぞれの明るさを足し合わせて記録します。ある色チャンネル c の信号は、星のスペクトル s(λ) とチャンネルの感度 Rc(λ) で重み付けした積分になります1。

I_c(\boldsymbol\theta)=\int s(\lambda)\,R_c(\lambda)\,I_\lambda(\boldsymbol\theta)\,d\lambda

波長ごとに山と谷の位置が違うため、積分すると互いに埋め合い、白色光の光条に乗る細かい縞のコントラストは、単一波長のときより低くなるのがふつうです。

光条の色の並び順は決まっていません。星のスペクトル、フィルターの透過帯域、センサーの感度、入射瞳全体の干渉、画像処理のすべてが結果に影響します。中心が白く見えても赤・緑・青の強さが等しいとは限らず、ホワイトバランスや明部の飽和も見え方を左右します。

ダブルスパイダーで何が変わるか

ダブルは各アームを平行な薄い羽根2枚にしたものです(図 7)。シングルとの違いは次の2点です。

シングル:各アーム1枚、w = 1 mmダブル:各アーム2枚、各 0.5 mm、中心間隔 10 mm拡大w = 0.5 mmd = 10 mm(中心間隔)
図 7|シングル(羽根幅 1 mm)とダブル(各 0.5 mm、中心間隔 10 mm)の開口。遮蔽面積はほぼ同じです。

縁の数が2倍なので、遠方の光条が明るくなる。星像の中心から十分離れると、光条の明るさは羽根の長辺の本数で決まります。ダブルは長辺が4本(シングルは2本)あるため、遠方では約2倍明るくなります。1枚が薄いぶん包絡線も2倍に広がり、中間の距離でも明るさが保たれます。

2枚に間隔があるので、光条が明暗に区切られる。2枚からの光が干渉し、光条方向に縞ができます。間隔 10 mm、550 nm では縞の周期は約 11.3″、最初の暗点は約 5.7″ です(図 8)。ダブルスリットの干渉と同じ関係です。

00.250.50.751020406080100120140160180200220240260光条に沿った角度 θ∥(秒角)羽根の項の強度(中心 = 1)シングル包絡線の第1暗点 113″ダブル包絡線の第1暗点 227″縞の周期 λ/d ≈ 11.3″シングル 1 mm:sinc²ダブルの包絡線 sinc²(各 0.5 mm)ダブル sinc²·cos²
図 8|550 nm での羽根の項(中心 = 1)。ダブルは包絡線(破線)が2倍に広がり、cos² で周期約 11.3″ の縞に区切られます。

写真での現れ方は、撮影する光のスペクトルで変わります。

  • 白色光:縞の周期は色ごとに違うため、星像の中心から約 20″ より外では縞が平均化され、途切れはほとんど見えません。約 50″ より外ではダブルの光条が一貫して明るく、遠方では約2倍です。シングルは 80–150″ に包絡線の谷があるため、その付近では差が 3–8 倍に広がり、色も赤紫から青へと変わります。50″ 以内では、縞の平均化で明るさが下がるため、ダブルが 20–35% ほど暗くなります。
  • ナローバンド(モノクロカメラ+Hα 656 nm など):縞が平均化されず、計算上、ダブルの光条は周期約 13.5″ の破線になります。シングルは途切れない線のままです(図 9)。
シングル · 各アーム1枚 1 mmダブル · 各アーム2枚 0.5 mm、間隔 10 mm① 白色光 400–700 nm(カラーカメラ)±160″40″0″40″80″120″160″±160″40″0″40″80″120″160″② Hα 656 nm、帯域幅 7 nm(モノクロカメラ+ナローバンドフィルター)±160″40″0″40″80″120″160″±160″40″0″40″80″120″160″下の帯:オレンジ枠内の右側の光条 0–160″ を拡大(上下方向は約4倍)
図 9|同じ主鏡・同じ表示ストレッチでのシングルとダブル(±160″)。① 白色光、② Hα ナローバンド。

図 10 は光条方向の明るさの比較です。

白色光 400–700 nm:4″ ごとの平均10⁻⁷10⁻⁶10⁻⁵10⁻⁴10⁻³020406080100120140160強度シングル 1 mmダブル 0.5 mm × 2Hα 656 nm、帯域幅 7 nm:生のプロファイル10⁻⁷10⁻⁶10⁻⁵10⁻⁴10⁻³020406080100120140160光条に沿った角度 θ∥(秒角)強度シングル 1 mmダブル 0.5 mm × 2
図 10|光条方向の明るさ(縦軸は対数)。上:白色光、4″ ごとの平均。下:Hα の生のプロファイル。

「ダブルの光条はコントラストが高い」といわれますが、計算では星像から離れた部分だけに当てはまります。光条を両脇の背景で割ると(図 11)、約 50″ より外ではダブルが高く、シングルの谷にあたる 90–130″ では約6倍、50″ 以内では逆にシングルが高くなります。星像全体の図で分かりにくいのは、光条が図では約1画素幅で縮小表示すると薄まることと、トーンカーブで明部が圧縮されること(8倍の強度差が画面では約2倍)のためです。

指標(白色光、ダブル ÷ シングル)星像の中心から値
光条の明るさ50″ 以内約 0.65–0.8
60–120″(シングルの谷を含む)約 2.8
遠方(〜900″)約 2
光条 ÷ 背景90–130″約 6
シングル 1 mmダブル 0.5 mm × 260″80″100″120″140″160″白色光、同じ表示ストレッチ。上下 ±10″、画素単位で3倍に拡大光条のコントラスト:光条の強度 ÷ 両脇 10–20″ の背景強度(4″ ごとの平均、白色光)10¹10²10³020406080100120140160星像からの距離(秒角)光条 / 背景約 50″ より外でダブルが高いシングル 1 mmダブル 0.5 mm × 2
図 11|上:白色光での右側の光条 60–160″(図 9 と同じストレッチ、画素単位で3倍に拡大)。下:光条 ÷ 両脇 10–20″ の背景(4″ ごとの平均)。

明るく飽和する星では、見える光条の大部分が約 50″ より外にあるため、このモデルではダブルのほうが強く長く見えると考えられます。想定したカメラ(800 mm、3.76 μm、約 0.97″/画素)では 50″ は約 50 画素で、明るい星の飽和した星像はこの程度まで広がります。飽和しない暗い星では、50″ 以内の差も残ります。

数式と図解:sinc² × cos²、包絡線と縞

読み方:ダブルの明るさ = 1枚ごとの包絡線 sinc² × 2枚の干渉 cos²。図 8 の破線が包絡線、塗りつぶしが cos² を掛けた結果です。

本稿の「ダブル」は、放射状の各アームが平行な2枚の羽根でできたもので、光軸方向から見た2枚の中心間隔を d とします。2組の十字を互いに回転させたものや、光軸方向に前後2段に重ねた支持構造のことではありません。

1

羽根2枚は、羽根1枚を左右にそれぞれ d/2 ずつ平行移動して足したものです。

S_2(x,y)=S_1\!\left(x-\frac{d}{2},\,y\right)+S_1\!\left(x+\frac{d}{2},\,y\right)
2

フーリエ変換のシフト定理:図形を平行移動しても、変換の形は変わらず、位相の因子が1つ掛かるだけです。

S(x-x_0,\,y)\;\longleftrightarrow\;\widetilde S(u,v)\,e^{-i2\pi ux_0}
3

2枚の位相因子は符号が逆なので、足し合わせるとオイラーの公式により余弦になります。これは幅のあるダブルスリットの回折式と同じ形です3。

\widetilde S_2=\widetilde S_1\left(e^{-i\pi ud}+e^{i\pi ud}\right)=2\,\widetilde S_1\cos(\pi du)
4

2乗して角度に戻すと、光条方向の強度は「1枚ごとの包絡線 × 2枚の干渉」になります。公平に比べるため、シングルの幅を 2w として2枚の合計遮蔽面積とそろえると、中心の振幅はどちらも 2wL に比例します。

\frac{I_{\rm double}(\theta_\parallel)}{I_{\rm double}(0)}=\mathrm{sinc}^2\!\left(\frac{\pi w\,\theta_\parallel}{\lambda}\right)\cos^2\!\left(\frac{\pi d\,\theta_\parallel}{\lambda}\right)
\frac{I_{\rm single}(\theta_\parallel)}{I_{\rm single}(0)}=\mathrm{sinc}^2\!\left(\frac{2\pi w\,\theta_\parallel}{\lambda}\right)

ダブルは1枚1枚が薄いので、その sinc² の包絡線はむしろシングルの2倍の幅になります。ただし、その包絡線は cos² によって区間ごとに切り分けられます。2本の曲線はどちらも中心で 1 に規格化しているので、比べるときはピークの高さではなく暗点の位置を見る必要があります。

5

暗い縞は cos が 0 になる位置にできます。最初の零点は π/2 で、以後 π ごとに現れます。

\frac{\pi d\,\theta}{\lambda}=\frac{\pi}{2}\ \Longrightarrow\ \theta_{\rm dark,0}=\frac{\lambda}{2d},\qquad \Delta\theta_{\rm fringe}=\frac{\lambda}{d}

波長 550 nm では、間隔 5、10、20 mm に対して縞の最初の暗点はそれぞれ約 11.3″、5.67″、2.84″ です。これらは薄い羽根1枚の包絡線の尺度より小さいので、ダブルでは星像により近い位置から光条方向に明暗が生じます。

ダブルの干渉暗点も波長とともに移動します。d=10 mm のとき、450、550、650 nm の最初の干渉暗点はそれぞれ約 4.64″、5.67″、6.70″ で、色のついた区間ができることがあります。白色光で合成すると細部の一部は平均化されます。また、円環状の開口やほかの羽根との干渉で暗点が埋まることもあるため、PSF 全体ではその位置が真っ暗になるとは限りません。

6

遠方で約2倍明るくなる理由:星像から十分離れると sin² の項は速く振動して平均が 1/2 になり、羽根の幅 w は包絡線から消えて、縁の本数の影響だけが残ります。

\left\langle|\widetilde S_1|^2\right\rangle=\frac{L^2}{2\pi^2u^2},\qquad \left\langle|\widetilde S_2|^2\right\rangle=4\cdot\frac{1}{2}\cdot\frac{1}{2}\cdot\frac{L^2}{\pi^2u^2}=\frac{L^2}{\pi^2u^2}

シングルの長辺は2本、ダブルは4本なので、遠方の平均の明るさはシングルの約2倍になり、羽根の幅には左右されません。入射瞳全体の計算では、60–900″ でこの比は 1.9–2.8 です。

7

白色光では縞が星像の近くでしか見えない理由:縞の位置は波長に比例するため、星像から離れるほど波長ごとの縞がずれていきます。中心波長 λ0、帯域幅 Δλ の平坦なスペクトルでは、縞の見え方(可視度)はおおよそ次のようになります。

V(\theta)\approx\left|\mathrm{sinc}\!\left(\frac{\pi d\,\theta\,\Delta\lambda}{\lambda_0^2}\right)\right|,\qquad V=0\ \ \text{at}\ \ \theta=\frac{\lambda_0^2}{d\,\Delta\lambda}

白色光(λ0 = 550 nm、Δλ = 300 nm)、d = 10 mm では、λ0²/(dΔλ) ≈ 20.8″ で縞の可視度が最初に 0 になり、それより外では大きく下がります(平坦なスペクトルの近似)。Hα ナローバンド(656 nm、7 nm)では約 1270″ で、光条全体に縞が残ります。厳密には実際のスペクトルで積分します(技術付録 E)。

光条は細くなるか

「ダブルは光条が細くシャープになる」といわれますが、計算で確かめられたのは光条方向の変化だけで、光条の太さと星像の大きさはほぼ同じです。

同じ主鏡 200 mm、同じ遮蔽面積で比べると、星像中心の半値全幅はどちらも約 0.56″、星像の中心から 20″ での光条の太さはシングル 0.467″、ダブル 0.478″ でした(図 12)。差は1画素(約 0.97″)よりずっと小さく、写真では見分けられません。

00.51-1.5-1-0.500.511.5光条と直交する方向の角度 θ⊥(秒角)、位置:星像から 20″規格化した強度シングル 1 mm:FWHM 0.467″ダブル 0.5 mm × 2:FWHM 0.478″
図 12|星像の中心から 20″ での光条の断面(550 nm、D = 200 mm)。半値全幅はシングル約 0.467″、ダブル約 0.478″。

機械的な安定性は別の問題で、取り付けと張力の設計ごとに確認が必要です。

数式と図解:cos² で光条が細くならない理由

読み方:cos² の因子は光条方向の角度だけで変わるため、直交方向の断面を規格化すると消えます(図 13)。

1

直交方向も式に入れます。ダブルの2次元の強度は、光条方向の角度 θ∥ だけを含む部分と、直交方向の角度 θ⊥ だけを含む部分に分けられます。

I_{\rm double}(\theta_\parallel,\theta_\perp)\;\propto\;\underbrace{\mathrm{sinc}^2\!\left(\frac{\pi w\,\theta_\parallel}{\lambda}\right)\cos^2\!\left(\frac{\pi d\,\theta_\parallel}{\lambda}\right)}_{A(\theta_\parallel)}\;\cdot\;\underbrace{\mathrm{sinc}^2\!\left(\frac{\pi L\,\theta_\perp}{\lambda}\right)}_{B(\theta_\perp)}
2

星像からある位置 θ0 で、光条と直交する方向に測り、その位置の中心の値で規格化します。A(θ0) は測定線上で一定なので、分子と分母で約分されます。

\frac{I_{\rm double}(\theta_0,\theta_\perp)}{I_{\rm double}(\theta_0,0)}=\frac{A(\theta_0)\,B(\theta_\perp)}{A(\theta_0)\,B(0)}=\mathrm{sinc}^2\!\left(\frac{\pi L\,\theta_\perp}{\lambda}\right)\qquad (A(\theta_0)\neq0)

結果には w も d も含まれず、シングルでも同じ式になります。理想的な矩形モデルでは、ダブルは光条の直交方向の形を変えず、光条方向の明暗だけを変えます。

00.51-3-2-10123光条と直交する方向の角度 θ⊥(秒角)規格化した強度シングル:sinc²(πLθ⊥/λ)ダブル:規格化後は完全に一致
図 13|理想的な矩形モデルでの直交方向の断面。規格化すると、シングルとダブルの曲線は重なります。

この結論は、変数分離できる理想的な矩形項についてのものです。実際の望遠鏡には、円形の縁、副鏡、向かい合うアーム、もう一方の向きの羽根との干渉も含まれます。PSF 全体での局所的な横幅は変わりうるので、具体的な形状、波長、測定位置をそろえて計算する必要があります。

主鏡の押さえ爪・押さえリング

入射瞳で光を遮るのはスパイダーだけではありません。どこを遮っても同じ原理で回折パターンが生じ、違うのは形と位置だけです。主鏡の固定方法がその例です。

押さえ爪が鏡面の縁にかかると、羽根と同じ仕組みで回折が起きます。爪は短く縁にあるため光条は弱く、爪の位置によっては向きも十字とは異なります。押さえリングは方向がないので新たな光条は生みませんが、有効口径を小さくします。

爪3個(幅 12 mm、張り出し 5 mm)では、通過面積は 92.8% から 92.2% へ約 0.6% 減るだけで、通常の露出では違いはごくわずかです。幅 3 mm の押さえリングは通過面積を約6%減らしますが、回折リングがわずかに広がるだけです(図 14)。シミュレーターの「差分のみ」でも確認できます。

遮蔽なし白色光 · ±40″10″通過面積 92.8%押さえ爪3個白色光 · ±40″10″通過面積 92.2%押さえリング白色光 · ±40″10″通過面積 86.9%
図 14|遮蔽なし、押さえ爪3個(幅 12 mm、張り出し 5 mm)、押さえリング(幅 3 mm)の開口と白色光の星像。表示条件は共通です。
数式と図解:押さえ爪と押さえリングを同じ計算に組み込む

読み方:押さえ爪も、覆われた部分を開口から除いて同じ計算をします。押さえリングは、主鏡の直径を D から D − 2t に変えることに相当します。

1

押さえ爪の組み込み方はスパイダーと同じです。3個の爪が覆う領域 C3 を開口の形から除き、入射瞳全体をフーリエ変換します7。

P_{\rm clips}=P_{\rm spider}\,(1-C_3),\qquad I(\boldsymbol\theta,\lambda)\;\propto\;\left|\widetilde P\!\left(\frac{\boldsymbol\theta}{\lambda}\right)\right|^2

押さえ爪の直線状の各辺も、羽根の長辺と同じように、その辺と直交する方向にごく弱い縞を生じます。爪は短いので、その縞は短くぼやけていて、羽根の光条ほど集中しません。

2

押さえリングはどの方向にも同じなので、新たに向きのある縞は生じません。有効口径を D から D − 2t に小さくし、その分だけ回折リングの尺度がわずかに大きくなります。

D_{\rm eff}=D-2t,\qquad \theta_{\rm Airy}\approx1.22\,\frac{\lambda}{D_{\rm eff}}

550 nm、主鏡 200 mm の例では、幅 3 mm の押さえリングで第1暗環の角半径(1.22λ/D)が約 0.69″ から約 0.71″ になります。副鏡とスパイダーがある場合、これは代表的な尺度で、星像全体の厳密な零点ではありません。

シミュレーターの「押さえ爪の幅」は鏡の縁に沿った方向の幅、「押さえ爪の張り出し」は半径方向の遮蔽の深さ、「押さえリングの幅」は連続した環状の遮蔽を調整します。3個の押さえ爪は 120° 間隔で、全体を十字スパイダーに対して 15° 回転させています。これは比較しやすいように決めた幾何モデルで、実際のミラーセルの爪の位置、縁の形、光軸の位置は実物に合わせて変える必要があります。爪による鏡面の応力、散乱、ピントずれはモデルに含まれていません。

まとめ

羽根が平行なら、ダブルでも光条は4本で、太さと星像の大きさもほぼ同じです。違いは光条方向の明るさに出ます。白色光では約 50″ より外で約2倍明るく(シングルの谷の付近では 3–8 倍)、明るい星では強く長く見えます。ナローバンドでは計算上、破線になります。比較条件:シングル 1 mm、ダブル各 0.5 mm・中心間隔 10 mm(遮蔽面積はほぼ同じ)。

項目シングル(1 mm)ダブル(各 0.5 mm、間隔 10 mm)
光条の本数・向き4本4本(平行なら8本にはならない)
光条方向の明るさ50″ 以内でやや明るい。80–150″ に谷があり、色むらが出る約 50″ より外で約2倍明るい。ナローバンドでは周期約 13.5″ の破線
光条の太さ・星像の大きさほぼ同じ(20″ での太さ 0.47″ と 0.48″)

明るい星の光条を長く連続させたい場合はダブル、ナローバンド中心で破線を避けたい場合はシングルが向くと考えられます。どちらも光条を細くしたり、像をシャープにしたりはしません。剛性は取り付けと張力の設計ごとに確認が必要です。

シミュレーター

恒星1つの星像を、入射瞳全体から計算します(白色光 400–700 nm)。モデルにはシーイング、追尾誤差、収差、飽和、ノイズは含まれません。

操作の例:

  1. 「シングル」で「羽根の幅」を動かし、光条の明るさと伸び方を見る。
  2. 「シングル vs ダブル」を押し、シングル 1 mm(比較用 A、破線)とダブルを強度グラフで比べる。
  3. 「単一波長」で「2枚の間隔」を変えて縞を見て、「白色光」に戻す。
  4. 「押さえ爪3個」を選び、「差分のみ」を押して増えた光を確認する。

スパイダー光条シミュレーター

構成と光の色を選んで計算します。

別ウィンドウで開く
シミュレーター画面の例。上部で構成と光の色を選び、左に黒背景の星像、右に入射瞳、パラメーター、計算結果を表示

JavaScript が必要です。細かい比較にはパソコンか横画面が向いています。


補足:3本アームのスパイダー

3本羽根のスパイダーも同じ回折の関係で説明できます。独立した羽根の向き1つにつき、それと直交する両方向の主な光条が1本生じます。

3本の放射状の羽根が 0°、120°、240° にあるとき、主な光条の向きは 90°/270°、210°/30°、330°/150° です。並べ替えると 30°、90°、150°、210°、270°、330° となり、隣り合う向きの間隔は 60° です。

3本羽根:0°、120°、240°550 nm · ±35″主な光条6本:30°、90°、150°、210°、270°、330°
図 15|3本羽根(120° 間隔)の開口と、6本光条の単色回折像(550 nm、±35″)。

十字スパイダーでは向かい合う2本のアームの向きが同じなので主な光条が重なり、伸びる向きは4つだけです。120° の3本羽根では、互いに重ならない直線の向きが3つあるため、主な光条は6本になります。ここで数えているのは主な光条の向きで、すべての副極大を含むわけではありません。5

3本羽根の場合も、まず複素振幅を合成してから絶対値の2乗をとる必要があります。羽根の向きが主な光条の向きを決め、羽根の位置は位相を通じて干渉に影響するため、3枚の強度の画像を単純に足し合わせることはできません。本稿の3本羽根は副鏡から外へ伸びる放射状の支持のことで、閉じた三角形の枠ではありません。


技術付録

パラメーターの定義、導出、計算方法をまとめています。印刷や PDF 保存ではすべて展開されます。

Aパラメーターの定義と用語

羽根の寸法はすべて光軸方向から見た投影形状で表します。ダブルの中心間隔は d、1枚の幅は w、2枚の縁どうしのすき間は g=d-w です。本文の例では、シングルは放射状のアーム4本、ダブルは各アームが平行な2枚の羽根でできています。

記号・用語 定義と使用範囲
D、s、\varepsilon 主鏡の有効口径、副鏡の投影径、直径による遮蔽比 \varepsilon=s/D。例では通常 200 mm、50 mm、0.25。
w、L、d 羽根1枚の投影幅、矩形の羽根区間の有効長、ダブルの中心間隔。放射状の区間1本を端の平らな長方形で近似したときの長さは (D-s)/2。
\lambda、f、p 波長、有効焦点距離、検出器の画素サイズ。例の 550 nm、800 mm、3.76 μm はいずれもモデルのパラメーターで、実測した機材の値ではない。
\theta_\parallel、\theta_\perp 光条に沿った方向と、光条と直交する方向の角度座標。縦向きの羽根が生む水平の光条では、それぞれ \theta_x、\theta_y。
複素振幅 E、位相 波の状態を複素数で表したもので、振幅と振動の進み具合の両方を含む。光路差 W は位相差 2\pi W/\lambda に対応する。
強度 I 共通の定数を省くと |E|^2 で、常に 0 以上。複素振幅の負の符号は位相の反転を表すもので、負の光量ではない。
瞳関数 P 入射瞳での複素振幅透過率の空間分布。収差がなく一様に照らされるモデルでは、光が通る所を 1、遮られる所を 0 とする。収差がある場合は位相も含める。
\widetilde P、u,v 瞳関数のフーリエ変換と空間周波数。u=\theta_x/\lambda、v=\theta_y/\lambda。
主極大、副極大、包絡線 最も主要な明るいピーク、周囲の弱いピーク、細かい縞を外から抑える大きな輪郭。包絡線の第1零点はパターンの終わりではない。
FWHM 半値全幅。どのピークを、どの方向に、どの位置で、どのスペクトルで測ったかを明示する必要があり、星像中心の幅と光条の横幅を混同してはならない。
コヒーレントな足し合わせ、インコヒーレントな足し合わせ 前者は複素振幅を足してから2乗する。後者は検出器での時間平均のもとで各成分の強度を足す。同じ波長と異なる波長とで扱いが違う。
シーイング、サンプリング 大気による星像の広がりと、画素による像の積分・離散的な記録。どちらも理想的な回折の細部を覆い隠す。
スカラー、近軸、フラウンホーファー 偏光ベクトルの詳細を無視すること、小角度近似、遠方場型の回折。理想的な集光素子は、遠方場型の角度分布を焦点面に写す。

以下では一貫して \operatorname{sinc}z=\sin z/z、かつ \operatorname{sinc}0=1 を用いる。\sin(\pi x)/(\pi x) の規格化を使うライブラリーもあるので、式に代入する前に換算すること。

B伝搬の位相から PSF と遮蔽の関係を導く

焦点面でのフーリエ関係

入射瞳の座標を (x,y)、焦点面の座標を (X,Y)、波数を k=2\pi/\lambda とします。等価な薄い集光素子と近軸スカラーモデルでは、集光素子が与える位相と、焦点面までの伝搬の位相核に、それぞれ次の項が含まれます。

\exp\!\left[-\frac{ik(x^2+y^2)}{2f}\right]
\exp\!\left[\frac{ik\{(X-x)^2+(Y-y)^2\}}{2f}\right]

2乗を展開すると、両者の x^2+y^2 の項は打ち消し合い、xX+yY に比例する1次の位相だけが残ります。入射瞳全体の波をコヒーレントに足し合わせると、次が得られます。

E_f(X,Y;\lambda)=\frac{E_{\rm in}e^{ikf}e^{ik(X^2+Y^2)/(2f)}}{i\lambda f}\,\widetilde P\!\left(\frac{X}{\lambda f},\frac{Y}{\lambda f}\right)
\widetilde P(u,v)=\iint P(x,y)e^{-i2\pi(ux+vy)}\,dx\,dy

E_{\rm in} は一様な入射振幅です。焦点面の前に付く共通の位相因子は、絶対値の2乗をとった強度には影響しません。\theta_x=X/f、\theta_y=Y/f として角度座標に直すと次のようになります。

I_f(\boldsymbol{\theta};\lambda)\propto\frac{1}{(\lambda f)^2}\left|\widetilde P\!\left(\frac{\theta_x}{\lambda},\frac{\theta_y}{\lambda}\right)\right|^2

このフーリエ関係は伝搬の位相から導いたもので、理想的な反射集光系の等価な瞳面に当てはまります。ピントずれや収差がある場合は、その位相を瞳関数に書き込む必要があり、純粋な2値の開口モデルはそのままでは使えません。1

遮蔽項と局所的な明るさの変化

スパイダーの領域を表す指示関数を M とします。羽根の投影の内側で 1、それ以外で 0 です。実際の瞳関数は P=P_0(1-M) です。S=P_0M と定義すると、伝搬の線形性から本文の引き算の関係が得られます。ここで S が表すのは「本来なら光が通るはずだったのに遮られた領域」であって、スパイダーの羽根が光っているわけではありません。

I=|E_0-E_S|^2=|E_0|^2+|E_S|^2-2\operatorname{Re}(E_0E_S^*)

最後の項が干渉の交差項で、その符号と大きさが、遮蔽による局所的な明るさの変化を決めます。ある観測位置が3つの開口部分から寄与を受ける例で考えます。

E_0=E_A+E_B+E_C,\qquad E_{\rm with}=E_A+E_C=E_0-E_B

E_A+E_C=1、E_B=-1 のとき、遮蔽がない状態の合計の場は 0 です。B を遮ると合計の場は 1 になり、その位置はかえって明るくなります。ここでの負の振幅は半周期の位相差を表します。不透明な羽根による乱れを、同じ形の透明な開口の場に負号を付けたものとして書くのは、スカラーの薄いスクリーンの条件での相補開口の関係の応用で、バビネの原理ともつながっています。4

エネルギーの積分はパーセバルの関係で制約されます。

\iint |\widetilde P(u,v)|^2\,du\,dv=\iint |P(x,y)|^2\,dx\,dy

2値の瞳面では、右辺は光が通る面積そのものです。矩形1つの形状項の零周波数での強度は面積の2乗に比例しますが、その2次元積分は面積に比例します。この2つは取り違えられません。また、どちらも望遠鏡全体で「光条に上乗せされたエネルギー」とそのままみなすことはできません。全体の強度には交差項が含まれるからです。

中央遮蔽と PSF の規格化

R=D/2、r=s/2、\rho=\sqrt{u^2+v^2} とします。円盤の変換と円環開口の振幅は次のとおりです。

F_R(\rho)=\pi R^2\frac{2J_1(2\pi R\rho)}{2\pi R\rho},\qquad F_R(0)=\pi R^2
E_{\rm ann}(u,v)=F_R(\rho)-F_r(\rho)

J_1 は第1種1次のベッセル関数です。標準的なエアリーパターンで第1暗環の角半径が約 1.22\lambda/D、星像中心の FWHM が約 1.028\lambda/D になるのは、中央遮蔽のない円形開口だけです。副鏡があると、中央の主極大とリングへのエネルギーの配分がどちらも変わります。1

異なるパターンを比べるときは、規格化の方法をはっきりさせる必要があります。光が通る面積を A_t とすると、積分が 1 になる角度の PSF を次のように定義できます。

p_\lambda(\boldsymbol{\theta})=\frac{|\widetilde P(\boldsymbol{\theta}/\lambda)|^2}{\lambda^2 A_t},\qquad\iint p_\lambda\,d^2\theta=1

シミュレーターでは、遮蔽のない円形開口の面積 A_0 の中心ピークを基準にして、幾何学的な遮蔽による損失を残しています。

H_\lambda(\boldsymbol{\theta})=\frac{|\widetilde P(\boldsymbol{\theta}/\lambda)|^2}{A_0^2},\qquad A_0=\pi D^2/4
T=\frac{A_t}{A_0},\qquad H_\lambda(0)=T^2
C羽根1枚と十字全体:sinc の導出、長さと幅の尺度、副鏡の影響

長方形の羽根の2次元回折

長方形の羽根の sinc の導出は、「光条の向き」の数式ボックスにまとめています。ここでは尺度だけを示します。

長方形の形状項1つの尺度 角度の尺度(ラジアン)
光条方向、片側の第1零点 \lambda/w
光条方向、中央の包絡線の零点から零点まで 2\lambda/w
光条方向、中央の包絡線の FWHM 0.8859\lambda/w
直交方向、片側の第1零点 \lambda/L
直交方向、中央ピークの FWHM 0.8859\lambda/L

係数 0.8859 は、\operatorname{sinc}^2z=1/2 の正の根 約 1.39156 から来ています。L=75 mm、550 nm の例では、長方形の項単独での直交方向の FWHM は約 1.340″ です。これは十字スパイダー全体で、任意の位置の光条の幅を表すものではありません。

向かい合うアームの干渉と円周による切り取り

主鏡の円盤、副鏡の円盤、縦の羽根、横の羽根の領域をそれぞれ C,C_s,V,H とし、\mathbf{1} を領域の指示関数とします。シングル十字全体の2値の開口形状は次のように書けます。

P_1=\mathbf{1}_C(1-\mathbf{1}_{C_s})(1-\mathbf{1}_V)(1-\mathbf{1}_H)

積の形にすることで、二重に差し引くことを避けています。副鏡の内側にある羽根の部分はもともと光を通さず、横と縦の羽根が重なる部分も1回だけ数えます。

端を平らとみなす近似では、各区間の長さは L=(D-s)/2、向かい合う2区間の中心間の距離は b=(D+s)/2 です。縦の放射状アーム1組の変換は、次の2つの等価な形で書けます。

\widetilde S_V\simeq2wL\operatorname{sinc}(\pi wu)\operatorname{sinc}(\pi Lv)\cos(\pi bv)
\widetilde S_V\simeq w\operatorname{sinc}(\pi wu)\left[D\operatorname{sinc}(\pi Dv)-s\operatorname{sinc}(\pi sv)\right]

1つ目の式は2区間の干渉を、2つ目の式は長い1本の長方形から中央の欠けを引いたものを表します。中心間の距離 b は羽根の長辺に沿っているので、直交方向の変調に対応します。ダブルの間隔 d は長辺と直交しているので、光条方向の変調に対応します。副鏡を大きくすると、区間の長さ、区間の間隔、円環の背景が同時に変わるため、どれか1つだけで光条全体の横幅を判断することはできません。

見かけの長さと画素の尺度

理想的な sinc の副極大には、有限の打ち切り位置がありません。しきい値で見かけの長さを定義すると、次のように書けます。

\theta_{\rm vis}=\sup\{\theta_\parallel:I_{\rm obs}(\theta_\parallel,0)>I_{\rm th}\}

ここで I_{\rm obs} には観測条件と表示条件が含まれ、I_{\rm th} は選んだしきい値です。暗い縞がある場合、しきい値を超える領域は途切れることがあります。焦点面の線座標はおよそ X=f\theta で、1画素あたりの角度は次のとおりです。

\Delta\theta_{\rm pixel}=206264.806\frac{p}{f}\quad (p,f\ \mathrm{in\ the\ same\ units})

たとえば焦点距離 800 mm、画素 3.76 μm では約 0.969″/画素です。本文の全体モデルでの星像中心の FWHM は約 0.564″ で、この画素1つにも満たないため、0.01″ 程度の理想的な横幅の差を、実写で見分けられる改善とみなすことはできません。

変えるパラメーター 直接予想できる傾向と制約
w を大きくする 羽根1枚の光条方向の包絡線の角度は小さくなり、遮蔽面積は増える。直交方向の幅が同じ倍率で増えるわけではない。
L を大きくする 孤立した長方形の直交方向の包絡線は狭くなるが、スパイダー全体では向かい合うアームも考える必要がある。
入射瞳のすべての寸法を同じ比率で大きくする 無次元の形状比が保たれていれば、すべての角度の尺度が同じ比率で小さくなる。
D だけを大きくし、w は変えない 星像中心と羽根の長さは変わるが、\lambda/w の包絡線の尺度は変わらない。
焦点距離 f を変え、入射瞳は変えない 焦点面での μm 単位の尺度は変わるが、角度で表したパターンそのものは変わらない。
波長 \lambda を長くする 波長によらない瞳面なら角度の尺度は大きくなる。ただし、絶対的なピークが変わらないとはいえない。
露出や表示の強調を増やす 淡い構造がより多く見えることはあるが、入射瞳による回折の尺度が変わるわけではない。
D白色光の PSF と色チャンネルの合成

羽根1枚の形状項では、光条方向の暗い縞は次を満たします。

\theta_{\parallel,m}=\frac{m\lambda}{w},\qquad m=\pm1,\pm2,\ldots

波長によらない瞳関数で、積分が 1 になる角度の PSF を使う場合、波長ごとの尺度の変換には、全体の積分を保つ因子を付ける必要があります。

p_\lambda(\boldsymbol{\theta})=\left(\frac{\lambda_0}{\lambda}\right)^2p_{\lambda_0}\!\left(\frac{\lambda_0}{\lambda}\boldsymbol{\theta}\right)

構造の位置が波長に比例して変わっても、絶対的なピークが変わらないわけではありません。積分で規格化した2次元分布では、広がる面積が大きくなる分だけピークは下がります。

\Phi を入射する光子のスペクトル、T_{\rm opt} を光学系の分光透過率、Q_c をカメラのある色チャンネルの感度とすると、そのチャンネルの信号は一般に次のように書けます。

C_c\propto\int \Phi(\lambda)T_{\rm opt}(\lambda)Q_c(\lambda)A_t(\lambda)\,\overline{p}_\lambda\,d\lambda

\overline{p}_\lambda は、必要に応じて大気や追尾によるぼけを考慮し、さらに画素で積分したあとの分布です。異なる波長は長時間の平均のもとで強度をそのまま足しますが、同じ波長の中では開口各部の寄与のコヒーレントな足し合わせを保つ必要があります。

付属のシミュレーターの「単一波長」は1つの波長をグレースケールで表示します。「RGB 3波長」は 450、550、650 nm を使います。「白色光」は指定した帯域内の 21 波長で台形積分を行い、平坦な光子スペクトルと理想的なガウス型のチャンネル感度を仮定しています。

Q_c(\lambda)=\exp\!\left[-\frac{(\lambda-\mu_c)^2}{2\sigma_c^2}\right]

3チャンネルの中心波長と幅は、R:620、40 nm、G:535、32 nm、B:455、30 nm です。表示は遮蔽のない円形開口の中心を基準にホワイトバランスをとり、各チャンネルの画像に共通の表示変換をかけています。

D_c=\left[1-e^{-G H_c}\right]^{1/2.2}

G は表示ゲインで、ノイズ、フルウェル、実際の飽和を含むカメラの露出をシミュレーションするものではありません。強度グラフは光子スペクトルと波長の因子で別に合成しており、画面上の RGB の値をそのまま足して全体の強度とみなすことはできません。

波長のサンプリングが有限なため、広い視野、大きな間隔、細かいリングの部分では誤差が出ることがあります。特定の CMOS での色を予測するには、実際の恒星スペクトル、フィルター、センサーの感度が必要で、波長のサンプリングも増やす必要があります。とくに3波長の表示は、分光測定の代わりにはなりません。

Eダブルの干渉、間隔、帯域幅、組み立て誤差

シフト定理と cos の干渉因子

シフト定理による cos 因子の導出は、「ダブルスパイダーで何が変わるか」の数式ボックスにまとめています。光条方向の位置を固定し、直交方向の断面を軸上の値で規格化すると、その位置がダブルの項の零点でなければ次のようになります。

\frac{I_2(\theta_0,\theta_\perp)}{I_2(\theta_0,0)}=\operatorname{sinc}^2\!\left(\frac{\pi L\theta_\perp}{\lambda}\right)

規格化した結果には d が含まれないので、このモデルでは間隔を変えても規格化した横断面の形は変わりません。この結論は、完全に平行で同じ長さの長方形による変数分離可能なモデルに限られます。円形の入射瞳全体では、ほかの形状や干渉の寄与も加わります。3

遮蔽面積をそろえたシングルとダブルの比較

シングルの幅を w_0、ダブルの各幅を w_0/2 とし、長さが同じなら、遮蔽面積の合計は等しく、振幅はそれぞれ次のとおりです。

A_{\rm single}=w_0L\operatorname{sinc}(\pi w_0u)\operatorname{sinc}(\pi Lv)
A_{\rm double}=w_0L\operatorname{sinc}(\pi w_0u/2)\cos(\pi du)\operatorname{sinc}(\pi Lv)

零周波数の振幅が同じでも、ほかの角度の強度が同じになるわけではありません。実際の円環内でずれた位置にある羽根では、合計の投影幅をそろえても遮蔽面積はおおよそ等しいだけなので、実際に切り取られる面積を確認する必要があります。

本文の全体モデルでの比較結果は次のとおりです。入射光、スペクトル、遮蔽のない円形開口のピークによる尺度はすべて共通で、直交方向の FWHM は星像の中心から 20″ の位置に固定しています。

項目 シングル 1 mm ダブル各 0.5 mm、d=10 mm
通過面積 / 遮蔽のない円形開口 92.7951% 92.7902%
羽根による追加の遮蔽 / 遮蔽のない円形開口 0.9549% 0.9598%
遮蔽のない円形開口に対するピーク比 0.861092 0.861003
星像中心の FWHM 0.5637″ 0.5637″
20″ の位置での直交方向の FWHM 0.4673″ 0.4784″
10⁻¹⁰10⁻⁸10⁻⁶10⁻⁴10⁻²10⁰01020304050607080光条に沿った角度 θ∥(秒角)強度(遮蔽のない円形開口のピーク = 1)シングル:w = 1 mmダブル:各 0.5 mm
図 16|開口全体での光条方向のプロファイル(550 nm)。谷は円環やほかの羽根との干渉で、0 まで落ちるとは限りません。

表はモデルの計算結果で、実測値ではありません。局所的な横幅の比較は、位置、波長、帯域、形状によって変わることがあります。

間隔と帯域幅で決まる光条方向の縞

\theta_{\parallel,m}^{\rm dark}=\left(m+\frac{1}{2}\right)\frac{\lambda}{d},\qquad\Delta\theta_\parallel=\frac{\lambda}{d}
\theta_{\parallel,0}^{\rm envelope}=\frac{\lambda}{w},\qquad \mathrm{FWHM}_{\perp,\rm rect}=0.8859\frac{\lambda}{L}

d が w よりずっと大きいとき、中央の明るい区間の光条方向の半値全幅は、おおよそ \lambda/(2d) です。これは光条に沿った局所的な明るい区間を表すもので、光条の太さではありません。

d 550 nm での最初の干渉暗点 焦点距離 800 mm での焦点面上の距離 3.76 μm 画素で換算
2 mm 28.36″ 110 μm 29.3 画素
5 mm 11.34″ 44 μm 11.7 画素
10 mm 5.67″ 22 μm 5.9 画素
20 mm 2.84″ 11 μm 2.9 画素
40 mm 1.42″ 5.5 μm 1.5 画素

帯域幅が有限だと、異なる波長の縞が平均化されます。中心 \lambda_0、全幅 \Delta\lambda の狭い矩形の帯域で、1/\lambda について1次まで展開し、ゆっくり変わる包絡線を定数とみなすと、縞の可視度は次のようになります。

V(\theta_\parallel)\simeq\left|\operatorname{sinc}\!\left(\frac{\pi d\theta_\parallel\Delta\lambda}{\lambda_0^2}\right)\right|

可視度は (I_{\max}-I_{\min})/(I_{\max}+I_{\min}) で定義します。この式は相対帯域幅が小さい場合の近似で、白色光ではナローバンドの式を無理に延長せず、スペクトルで積分する必要があります。

間隔の公差と平行度は別の問題

\frac{\delta\theta_{\rm dark}}{\theta_{\rm dark}}\simeq-\frac{\delta d}{d}

たとえば d=10 mm のとき、間隔の誤差 ±0.1 mm は、暗い縞の位置の約 ±1% の変化に相当し、550 nm の最初の暗い縞の付近では約 ±0.057″ です。許容できるかどうかは目的とする尺度によるので、共通の公差はありません。

2枚の向きの差が \Delta\alpha のとき、星像の中心からある角半径の位置での、2本の主な光条の向きの幾何学的な分離はおよそ次のとおりです。

\Delta s\simeq\theta_{\rm radius}\,\Delta\alpha\qquad(\Delta\alpha\ \mathrm{in\ radians})

半径 300″ の位置で分離を 0.5″ 未満にするには、向きの差を約 0.095° 未満にする必要があります。これは与えた許容値から求めた一例です。

羽根の面の向きも同じように重要です。材料の厚さが t、光軸方向の奥行きが h のとき、長辺のまわりに \beta だけ傾くと、投影幅はおよそ w_{\rm eff}=t|\cos\beta|+h|\sin\beta| になります。厚さ 0.2 mm、奥行き 20 mm で 1° 傾くと、投影幅はすでに約 0.55 mm になります。実際の曲がりやねじれがあると、幅と向きが羽根に沿って変わるため、材料の公称厚さではなく実際の投影でモデル化する必要があります。

理想的な長方形が2つ一致したり重なったりする場合は、遮蔽の和集合を計算する必要があり、重なった部分を2倍の遮蔽として扱うことはできません。シミュレーターは d=0 のとき同じ幅のシングルに、d=w のとき幅 2w の連続した遮蔽1枚になります。

F120° の3本羽根:向き、位置、6回対称の強度

各羽根の長辺方向と法線方向の単位ベクトルは次のように書けます。

\boldsymbol{t}_j=(\cos\phi_j,\sin\phi_j),\qquad\boldsymbol{n}_j=(-\sin\phi_j,\cos\phi_j)

\boldsymbol{q}=\boldsymbol{\theta}/\lambda とおきます。j 番目の羽根の中心が \boldsymbol{r}_j にあり、長さと幅が L_j,w_j のとき、回転と平行移動をした長方形の変換は次のとおりです。

\widetilde S_j(\boldsymbol{q})=w_jL_j\operatorname{sinc}(\pi w_j\boldsymbol{q}\cdot\boldsymbol{n}_j)\operatorname{sinc}(\pi L_j\boldsymbol{q}\cdot\boldsymbol{t}_j)e^{-i2\pi\boldsymbol{q}\cdot\boldsymbol{r}_j}

前の2つの sinc が羽根1枚の形を決め、最後の複素指数関数がその位置による位相を表します。副鏡の半径 r から主鏡の半径 R まで伸びる端の平らな近似では L=R-r で、中心は羽根の方向に原点から (R+r)/2 の位置にあります。3本羽根全体は次のとおりです。

I_3(\boldsymbol{\theta};\lambda)\propto\left|E_{\rm ann}(\boldsymbol{\theta}/\lambda)-\sum_{j=0}^{2}\widetilde S_j(\boldsymbol{\theta}/\lambda)\right|^2

付録の図では、円周による切り取りを厳密に考慮しています。各羽根の局所座標で、n は羽根の幅方向、長辺方向の座標は s_{\rm in}=\sqrt{r^2-n^2} から s_{\rm out}=\sqrt{R^2-n^2} までの範囲です。この計算例では羽根の幅が副鏡の半径よりずっと小さいので、平方根はすべて定義されます。両者の差を \Delta s とすると次のとおりです。

\widetilde S_j=\int_{-w/2}^{w/2}e^{-i2\pi q_n n}\,\Delta s\,\operatorname{sinc}(\pi q_t\Delta s)\,e^{-i\pi q_t(s_{\rm out}+s_{\rm in})}\,dn

長辺方向の積分は解析的に済ませ、残った幅方向の積分を数値的に求めます。3枚が交わる部分は副鏡の遮蔽の内側にあるので、二重には差し引きません。3本羽根の瞳面は 120° の回転対称をもちますが、点対称とは限らないため、その変換は一般に複素数になります。

ただし、2値で収差のない瞳関数は実数なので、次が成り立ちます。

P\in\mathbb{R}\ \Longrightarrow\ \widetilde P(-\boldsymbol{q})=\widetilde P(\boldsymbol{q})^*\ \Longrightarrow\ I(-\boldsymbol{\theta})=I(\boldsymbol{\theta})

強度は 180° の点対称をもち、これに3本羽根の形状の 120° の回転対称が加わって、60° ごとの強度の対称性が得られます。非対称な収差や複雑な位相をもつ瞳関数を加えた場合は、この手順を無条件には当てはめられません。

Gシミュレーションの方法、検証の記録、適用範囲

薄い羽根のサンプリングと半解析的な積分

口径 200 mm を直径方向に 1024 点で離散化すると、0.1 mm の羽根はメッシュ半分ほどの幅しかありません。そのまま2値でサンプリングすると、羽根が抜け落ちたり幅を誤って表したりすることがあります。ゼロ詰めで細かくなるのは焦点面のサンプリングだけで、入射瞳の形状のサンプリング不足は補えません。細いスパイダーの数値サンプリングの問題は、関連する研究でも論じられています。4

このシミュレーターは、円形の口径、円形の副鏡、シングル/ダブルの十字について、連続した形状のまま半解析的にフーリエ積分を行います。第1象限の縦の帯を例にとると、シングルの横方向の区間は [0,w/2]、重ならないダブルは [(d-w)/2,(d+w)/2] で、重なる場合は和集合として合わせます。円環で許される縦方向の境界は次のとおりです。

y_{\rm out}(x)=\sqrt{R^2-x^2},\qquad y_{\rm in}(x)=\sqrt{\max(0,r^2-x^2)}

まず縦方向の積分を解析的に済ませ、そのあと羽根の幅方向に積分します。

F_V(u,v)=4\int_a^b\cos(2\pi ux)\,K(v;y_{\rm in},y_{\rm out})\,dx
K(v;l,h)=(h-l)\cos[\pi v(h+l)]\operatorname{sinc}[\pi v(h-l)]

この K の書き方は、空間周波数が 0 に近いときに安定です。横の帯では u,v を入れ替え、交差する領域は共通部分の上下限で積分します。最後に次のようになります。

E=E_{\rm ann}-F_V-F_H+F_{V\cap H}

積分は境界が切り替わる位置で細分し、ガウス・ルジャンドル求積を使います。円環項のベッセル関数は、小さい引数での級数と大きい引数での漸近展開を組み合わせて計算します。6 これにより、粗い入射瞳のメッシュで細い羽根を表すことによる主な誤差は避けられますが、積分、画像の角度サンプリング、波長のサンプリングによる誤差は残ります。

計算コアの検証記録

確認項目 数値検証の記録
ベッセル関数 J_1 SciPy と 1001 点を比較、引数の範囲 0–20000。最大絶対誤差は約 1.75 × 10⁻¹¹。
入射瞳全体の複素振幅 シングル/ダブル、副鏡なし、重なりありの 49 ケースを独立した適応積分と比較。32 点の求積での検証で、最大振幅誤差を遮蔽のない円形開口の面積で割った値は約 2.36 × 10⁻⁸。
一致/接触の極限 d=0 で同じ幅のシングルと一致、d=w で幅 2w のシングルと一致。テスト点での数値の差は 0。
中心のピーク 独立した面積の積分により、遮蔽のない円形開口に対するピーク比が透過面積比の2乗になることを確認。
3本羽根の対称性 60° 回転での強度の対称性を検証。最大絶対誤差は約 4.45 × 10⁻¹⁶。

これらは記載したテストセットに対する誤差で、すべてのパラメーター範囲での上限ではありません。強度がほぼ 0 の深い谷では、相対誤差が大きくなることがあります。

画像とグラフの適用範囲

初期設定では背景に空のノイズはありません。計算には、シーイング、追尾誤差、ピントずれ、鏡面の収差、平行でない羽根や曲がった羽根、表面散乱、ゴースト、熱による揺らぎ、カメラのマイクロレンズ、フルウェルでの飽和、実際の色特性は含まれていません。画素サイズは角度の換算にだけ使い、画素面積での積分はしていません。広い視野では、2次元の星像がごく細い中心部を十分にサンプリングできないことがあるので、視野を狭めるか、高密度のプロファイルを見てください。

プログラムはブラウザー内で計算し、外部とは通信しません。PDF では図と説明だけが残ります。

参考文献と関連資料

  1. S. Konijnenberg、A. J. L. Adam、H. P. Urbach,BSc Optics,Fourier Optics。

    集光の位相、焦点面でのフーリエ関係、円形開口の回折についての教科書的な説明。

  2. OpenStax / Rice University,University Physics Vol. 3,4.2 Intensity in Single-Slit Diffraction。

    有限幅スリットの位相の足し合わせと sinc² の強度。

  3. OpenStax / Rice University,University Physics Vol. 3,4.3 Double-Slit Diffraction。

    幅のあるダブルスリットの回折の包絡線と干渉縞。

  4. J. E. Harvey、C. Ftaclas,Diffraction effects of telescope secondary mirror spiders on various image-quality criteria,Applied Optics 34(28), 6337–6349 (1995)。

    DOI: 10.1364/AO.34.006337。スパイダーとさまざまな結像の評価指標、細い羽根のサンプリングなどを論じています。リンク先は著者が公開している全文です。

  5. NASA / ESA / CSA / STScI,Webb’s Diffraction Spikes。

    支持の向きと、それに直交する光条についての直観的な図解。分割主鏡による回折構造のすべてを、本稿の例に当てはめてはいません。

  6. NIST Digital Library of Mathematical Functions,10.17 Asymptotic Expansions for Large Argument。

    ベッセル関数の大きい引数での展開。付属の計算コアで使用しています。

  7. STScI, HST NICMOS LAPLACE archive, Lyot-stop description. 主鏡の固定パッド、外周の支持リング、副鏡、スパイダーを瞳面での遮蔽として挙げています。 出典
  8. DeanS 等,Spider vanes, single or double?,Cloudy Nights,2011。

    利用者による、シングルとダブルのスパイダーの光条の見え方についての議論。経験的な観察で、測定ではありません。

本稿の図と数値は、記載した理想モデルによる計算・作図で、実写ではありません。数値例の条件と検証の範囲は「技術付録」を参照してください。